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変わり始めた中国スマホメーカーの勢力図。ファーウェイ・シャオミの発表から読み解く(本田雅一) - Engadget 日本版

huawei-xiaomi

おそらく偶然なのでしょうけれど、6月2日にHuawei(ファーウェイ)とXiaomi(シャオミ)、中国でも最大手のスマートフォンメーカー2社が新型スマートフォンを発表しました。

両社の製品を比較することに大きな意味はありません。ミドルクラスの製品では競合する両社ですが、立ち位置や目指している方向、商品のまとめ方なども全く異なるからです。

ファーウェイはご存知の通り、5G通信に関連する必須特許も多数保有する通信インフラの会社で、半導体設計や生産の技術も持ち、近年では独自SoCやソフトウェア開発能力の高さなどを端末開発に応用することで、急速にスマートフォン市場でのシェアを伸ばしてきた技術のトップ企業です。

一方、シャオミはスマートフォンメーカーというよりも、スマートフォンが引き起こしてきた技術イノベーションによる市場の変化を背景に様々なスマート家電を作り出し、ライフスタイルの提案を中心に据えた新興メーカーです。

企業としての規模や技術力などは圧倒的にファーウェイのほうが上ですが、シャオミは一般コンシューマのライフスタイルに根ざして、メインストリーム市場にコストパフォーマンスの良い製品を並べることで量産効果を高めているため、とてもお買い得な製品が多いですよね。

各製品の発表内容は別途詳報が出ているのでそちらをご覧いただくとして、同日にあった二つのブランドによる発表会から個人的に注目した点をピックアップしながら、近年、新規参入が続いてきた中国製スマートフォンメーカーの趨勢を占ってみたいと思います。

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"総合力"を背景に独自のアイデアを次々と実現するファーウェイ

ファーウェイは、AppleのiPhoneやサムスンのGalaxyをロールモデルとし、中国の巨大市場に根ざしたラインナップを展開してきました。ロールモデルとする2社の機能やデザインなどで類似性が指摘されることもありますが、ファーウェイの真骨頂はやはり独自SoCでしょう。

今や常識となってきたマルチカメラを採用 / 進化させてきたファーウェイは、独自の半導体技術やAndroidをベースに深い部分にまで手を入れることで次々と新しい提案を行ってきました。独自の機械学習向けプロセッサを内蔵させるなどしていますね。しかし、中でも力を入れてきたのがカメラでしょう。

カメラ機能は、機能性や画質を独自で上げようにも開発にはなかなかに困難が伴います。ちょっとした画角の変化で露出やホワイトバランスを調整しなければならず、操作だけでなくセンサー類からの入力に応じて画面表示も変えねばなりません。

多数の操作や撮影パラメータをカメラアプリにフィードバックしながら、リアルタイムに映像を生成したり、露出などを調整したりしているわけですが、さらに近年は複数フレームの映像を参照しながらの機能、画像処理も増えてきました。

ファーウェイがカメラ機能で新しい提案をすることが多かったのは自社でSoCを開発し、そのSoCの機能とセットで端末に搭載するカメラおよび、カメラ制御ソフトが開発できたからです。同じような優位性はAppleにもありますよね。

p40 pro

今回発表された「HUAWEI P40 Pro」は、カメラ機能に力を入れたモデルとして毎年発表されてきたものだけあって、AIを用いて写り込んだ他の人物を消すなどの機能も入っています。しかし、むしろホワイトバランスや露出といったカメラの基本部分に手を入れていることが印象的でした。

また、AppleがiPhone 11シリーズで導入し、盛んに訴求をしていた被写体認識、そして被写体ごとに異なる現像処理を行うことでリアリティ度合いが高まるセマンティックレンダリング、これらが今回の端末では導入されたようです(ただ、iPhone 11と全く同じ処理のはずはありませんから、実際の効果は実機でテストをしてみなければわかりません)。いずれにせよカメラの画質や機能性は実機で確かめてみたいところですね。

MatePad Pro

同時に発表されたタブレットやPCと無線接続することでスマートフォンの画面やスマートフォン内のデータ、カメラなどの利用を可能にする「HUAWEI Share」など、ファーウェイは様々なデバイスを横断的に開発し、実に魅力的な機種連携を実現しています。

こうした異なるジャンルの製品をすり合わせ、自然に連動させることはなかなか難しいものです。毎年のように洗練度が増してきたファーウェイのソフトウェア技術ですが、今回の提案はなかなか見事。もちろん、「ファーウェイで揃える」というハードルがあるわけですが、中国という巨大市場で億単位のユーザーを抱えているからこそ実現できたとも言えます。

しかし、スマートフォンの買い替えを毎年のように促し、新陳代謝を高めて勢力を伸ばしていく手法は、中国での存在感の大きさを考えれば正しいやり方なのでしょうけれど、日本市場を考えた場合はやや厳しいように思います。

日本ではHMSでGMSを置き換えることが極めて難しい

huawei p40 pro

本来なら毎年年末商戦前に発表される新しいMateシリーズとともに、その年のスマートフォントレンドに影響を与えるファーウェイのPシリーズ。今年はP20以来と言えるほど"良さげ"なカメラを搭載してきているにもかかわらず、日本市場で旋風を巻き起こす気がしないのは、GMS (Google Mobile Service)を搭載できないからにほかありません。

米中貿易摩擦の中で米国政府がファーウェイに経済制裁を行なっていることはご存知でしょう。この制裁が正当なものかどうかはともかく、現時点でファーウェイはGoogleが提供するGMSを導入しての製品出荷ができません。

GMSにはGmailやChromeといった基本的なサービスにアクセスするアプリケーションが含まれていますが、最も問題なのはGoogle Playが利用できないこと。また、著作権保護時技術も同じものが組み込めないため、Netflixなど著作権管理が必要なアプリが完全に動作しない場合があります。

ファーウェイはGMSが使えないことを補うため、HMS(HUAWEI Mobile Services)を開発、提供しています。中でも重要なのがAppGalleryで、Google Playと同様にアプリケーションのダウンロード、購入、アプリ内課金などの管理が行われます。

ファーウェイのスマートフォンはAndroid 10をベースに開発されていますから、アプリパッケージそのものはほとんどの部分を流用できます。その上、ファーウェイは昨年後半、中国で40%以上という記録的なシェアを達成しています。Googleは中国でビジネスをしていませんから、Google Playが使えないことが不利にはなりません。

しかし、日本ではAndroid向けアプリはGoogle Playを通じて流通していますから、これが使えないとなると、スマートフォンに詳しくない人にとって途端に難しい端末になってしまいます。何しろAndroidのように見えてAndroidではない。ということを理解した上で、AppGalleryに登録されていないアプリをどう使うか? というノウハウを持たねばならないわけですから、これは大きなハードルでしょう。

HUAWEI P40 Pro

ファーウェイはAppGalleryを「170か国で提供される4億人以上が利用するプラットフォームで、140万人以上の開発者が参加している」と述べ、そのスケールの大きさを強調するのですが、4億人の大多数は中国なのでは? という疑念が拭えません。

ファーウェイは困難を乗り越えられるのか?

米中貿易摩擦に巻き込まれた形のファーウェイですが、政治問題を独自に解決することはできないでしょう。したがって、しばらくはGMSがない状況で、スマートフォンの販売を行わねばなりません。

ところがアプリの中には、販売地域に根ざしたサービス(とそのアプリ)を利用したい場合があります。グルメ情報などはその1つ、地図サービスも同じです。もちろん「○○は対応しているよ」という話はあるでしょうし、ウェブでアクセスしてURLをホーム画面に登録しておけば困らない、という意見もあるかもしれませんが、ファーウェイ自身、GMS非対応が中国以外の市場では相当なハンディキャップとなることを意識しているはずです。

DRM(デジタル著作権管理)の関係でNetflixが視聴できないため、U-NEXTの配信映像を6か月無料で楽しめる措置を盛り込んだり、Google Mapsが使えなくとも不便じゃないよ! と言わんばかりにNAVITIMEのプレミアムコースを1年無料で使えたりといった提案もされています。これらの施策は、ファーウェイ自身が自分たちの弱点をわかっているからでしょう。

SoCに内蔵する機能とOS上に実装する機能、それらを組み合わせて最終的なアプリやサービスとしてまとめあげる能力など、ファーウェイの技術的な総合力はAndroidスマートフォンメーカーの中では抜きん出ています。

総合力で勝負するのはAppleも同じですが、そのAppleに対して一部のジャンルや機能であるにせよ、イニシアティブをとって前に進めるメーカーはほとんどありませんから、ファーウェイには何とか踏ん張ってもらって、Android端末の進化に寄与して欲しいものです。しかし、米トランプ政権による中国制裁が緩和される兆候は、今のところまったく見られません。

ミドルクラスを軸足を置くシャオミ

さて、スマホを使い慣れていて技術的にも詳しいユーザーの中には、「GMSのパッケージを独自に入手すればインストールできるし、流通していないものもアプリケーションパッケージの形で入手 / 導入すればどうってことないよ!」という人もいるかもしれませんが、それでは"わかった人向け"だけの端末になってしまいます。

今やスマートフォンの中心ユーザーは、最新端末を求めるアーリーアダプタではなく、日常的な道具としてスマートフォンを使っている人たちです。そのことは、iPhone SE(第2世代)が大ヒットしていることからもわかるはず。もちろん、ファーウェイもミドルクラスに向けて魅力的なスペックを盛り込んでいますが、iPhoneを使い慣れた人に尋ねても、Androidをよく知る人に尋ねてもよくわからない端末となってしまうようでは、ミドルクラスの製品を求めるユーザーにはなかなか受け入れてもらえません。

中国のスマートフォンメーカーにあった安物端末のイメージを払拭し、最先端へのリーダーシップを取ろうとしてきたファーウェイですが、この問題が解決するまではシェア拡大へのシナリオは描きにくいでしょう。それは同じくGMS搭載が望ましいタブレットも同じです。

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そういった観点からも、格安SIMカードなどの一般化によりユーザー増加が続くミドルクラスのスマートフォンでは、シャオミの影響力が高まっていきそうです。日本市場参入に際しては、FeliCa対応のNFCチップを使い、おサイフケータイに対応してから……なんてことはせず、中国向けに作っている製品の量産効果を最大限に生かし、コストパフォーマンスの高さに狙いを絞った商品企画は、今の日本におけるAndroid端末市場にはぴったりです。

ミドルクラスの中でもパフォーマンスが高い(しかしハイエンドよりもずっと安価な)Snapdragon 730G、720Gを使いつつ、外観や搭載メモリ、ディスプレイ、ガラス素材、カメラなどを上位に匹敵するスペックで仕上げる手法は、成熟しつつあるスマートフォン市場では販売ボリュームを出しやすいでしょう。

上位モデルで3万円を切る「Redmi Note 9S」

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シャオミはすでに日本に投入していたMi Note 10シリーズの低価格版として、カメラ数を少なくした「Mi Note 10 Lite」を発表しましたが、今回のハイライトはなんといっても4GB+64GBモデルで2万4800円、6GB+128GBモデルで2万9800円(価格はいずれも税込)という「Redmi Note 9S」です。

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メインカメラの画素数が4800万画素とMi Note 10シリーズには遠く及ばないとは言え、4-in-1 スーパーピクセルと呼ばれる4画素を1つにまとめることでノイズ低減に期待できる画素加算機能を備えたCMOSセンサーを採用。画素加算時で1200万画素は、メインカメラとして十分なスペックです。同社得意のマクロ専用カメラや距離センサーなどのカメラ構成も、ファーウェイほどラディカルな要素はないものの、こなれています。

もともとRedmi Noteはシャオミ製スマートフォンにおいて中国で一番人気のシリーズ。9Sでは画面占有率91%の6.67インチの液晶ディスプレイや、5020mAhの大容量バッテリーなど、基本がしっかりしたモデルとなっています。Snap Dragon 720Gという選択も堅実。

プロセッサなどはミドルクラスなのに、それ以外のスペックは上位クラスに匹敵するという商品の組み立て方は、Mi Note 10シリーズとも共通すると言えそうです。

OPPOも含め、一大勢力に至っているメーカー不在のミドルクラスAndroidスマートフォン市場。国内メーカーも頑張っていますけれど、今後はシャオミをはじめとする中国勢が、このジャンルで勢力を伸ばすのではないでしょうか。

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