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ロヒンギャ救済 コロナ禍 各国連携急げ - 東京新聞

 ミャンマーで迫害されたイスラム教徒少数民族ロヒンギャが逃げ込んだバングラデシュのキャンプで、新型コロナウイルスの死者が初めて出た。爆発的感染が危惧され、救済に各国の連携が急務だ。

 バングラ南東部コックスバザールのキャンプでは、約八十五万人のロヒンギャが暮らす。

 二〇一七年八月、ミャンマー国軍との衝突で数千人が殺されたほか、レイプ、放火などの迫害を受け、国境を挟んで数十キロのミャンマー西部ラカイン州から逃げてきた。

 掘っ立て小屋に身を寄せ合い、数家族、約四十人が一つのトイレを共有する。その多くは隣に井戸があり、水は大腸菌で汚染されている。衛生状態は極めて悪い。

 「三密」に近い環境の中、感染者は五月中旬に初確認され、同月末に初の死者が出た。上下水道の設備はなく、今や日本などでは常識の「こまめな手洗い」は困難。マスクは難民の五割ぐらいにしか普及していない。感染者の急増が危険視されている。

 ミャンマーは「ロヒンギャは不法移民」との姿勢から、国籍を与えないままの帰還を求め、コロナ禍での救済にも消極的。難民を引き受ける格好になったバングラは世界最貧国の一つである上、約六万人の感染者がおりロヒンギャにまで手が回らない。キャンプを脱出した難民の船がマレーシアなどで着岸を拒まれて漂流、多数が死亡する痛ましい出来事も続いた。

 キャンプは一部を除いて封鎖された。デモ防止策として携帯電話の通信が制限され、難民たちはウイルスの知識に乏しい。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や非政府組織(NGO)の人たちが清潔さやソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を保つことの大切さなど、対策の基本を教えて回っている。隔離ベッドも用意したものの、二百十床にすぎない。

 「ロヒンギャへのジェノサイド(民族大量虐殺)の有無」が、国際司法裁判所(ICJ)で争われている。実質指導者のアウン・サン・スー・チー国家顧問は法廷でジェノサイドを否定。ICJの命令で「迫害防止策」を提出したが内容は公表されていない。

 総選挙を十一月に控えた政権が「国内世論は反ロヒンギャ」を理由に動かない以上、国際社会が手を取り合うしかない。迫害されて避難し、国籍をもらえずに帰還せよと言われ、コロナ禍でも満足な扱いを受けず…。まれに見る人権無視が放置されてはならない。

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