
中国企業トップのアリババ社が杭州に作った近未来型ホテル「FlyZoo Hotel」に、ライターの西谷格氏が潜入。彼がそこで見た「もの運びロボット」と「超高性能AIスピーカー」の驚くべき実態とは? 日本人が知らない「中国IT社会」の現状を明かした新書『ルポ デジタルチャイナ体験記』(取材時期:2019年7月)から一部抜粋・再構成してお届けする。
館内の廊下を歩いていると、高さ1メートルほどの銀色の箱のような物体が、のろのろと移動しているのを見かけた。清掃ロボットのようにも見えるが、それにしては小さすぎる。
もしやと思ってスタッフを探して聞くと「客室にものを運ぶロボットです」とのこと。「天猫精霊福袋(ティエンマオジンリンフウダイ)」という呼び名らしい。
さっそく試そうと思い、部屋に戻って、「Tモールジニー(各部屋に備え付けられたアリババ社製のAIスピーカー)、ミネラルウォーターを持ってきて」と頼むと、「はい、スタッフがお持ちします」との返答。
10分ほど待つと、スマホ内のホテル専用アプリが起動し、アラームが鳴った。ドアを開けると、運びロボットが鎮座しており、スマホに表示されたパスワードを液晶パネルに入力すると、ウィーンという音とともにゆっくりとフタが開いた。
箱の中にはミネラルウォーターのボトルが無造作に入っており、取り出してフタを閉めると、ロボットは無言でエレベーターのほうへと進んで行った。自動販売機からモノを取り出したような感覚だ。人間らしさは微塵も感じない。
■楽しくも怖くもあるAIとの会話
Tモールジニーとの会話が面白かったので、いろいろ話しかけてみた。
「チェックアウトは何時?」「正午12時です」
これぐらいは当然答えられるとして、「ドライヤーはどこにあるの?」「洗面所の引き出しの中にあります」とまで答えられたのには驚いた。事前にかなりのデータがインプットされているようだ。
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