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新型コロナ:地方の病床逼迫懸念じわり 使用率、12府県で急上昇 - 日本経済新聞

大阪の入院者数は前週比1.75倍に増加(5月、新型コロナウイルスの中等症患者を受け入れる大阪市の病室)

大阪の入院者数は前週比1.75倍に増加(5月、新型コロナウイルスの中等症患者を受け入れる大阪市の病室)

新型コロナウイルスの感染が全国で急拡大し、地方の医療体制が逼迫する懸念が出ている。コロナ患者向け病床の使用率は、大阪府や愛知県など12府県で前の週より10ポイント以上上昇した。病床の使用率は最も高い自治体でも現状で約4割にとどまるが、病床の融通ができずにベッドを用意できない事態も起きている。多角的な備えが必要だ。

現在の状況を「第1波」と比べるとどうか。厚生労働省の資料によると、7月29日時点の全国の入院者数は4034人と、4月28日時点に比べて約1600人少ない。退院患者や死亡した人などを除いた陽性者数も7388人と、約1300人下回る。

第1波の当時はPCR検査で2回陰性にならないと退院できず病床を圧迫した。無症状や軽症の人も原則入院していた。現在は発症から10日間経過すれば同検査なしで退院できるようになり、軽症者らは宿泊施設などでの療養が進み、入院は基本的に中等症以上の人となっている。

病床数は7月29日時点で全国2万314床と、5月1日時点より2割以上多い。病床使用率は19.9%と15ポイント下回っている。現在は感染者の多くが20~30代。このため重症者は全国で92人と比較可能な5月7日の341人に比べまだ少ない。

一方で地方の感染拡大ペースの速さが懸念される。政府の新型コロナウイルス対策分科会によると、29日までの1週間の感染者数が前の週と比べ2倍以上に増えたのは16都道府県に及ぶ。宮崎は27.67倍、熊本は20.60倍、沖縄は13.11倍といずれも10倍超に。東京(1.06倍)など首都圏に比べ感染拡大が急だ。

コロナ患者向けの病床使用率は高まりつつある。厚労省の資料を基に計算すると、29日時点の病床使用率が前週より10ポイント以上上昇したのは12府県。大阪は24.3%から42.5%に。愛知や福岡、沖縄も4割に迫る。

通勤や通学で多くの人が行き来する隣接府県も同様だ。関西圏では滋賀で9.9%から36.9%、和歌山が12.0%から29.3%に高まった。

大阪の入院者数は29日時点で前週比1.75倍に増加し、このままのペースで増え続ければ2週間以内に確保病床は満床になる計算だ。病床を増やすとともに、空いた病床にどう素早く患者を移すか、地域の円滑な連携が求められる。

医療現場の危機感は強い。沖縄県の病院の幹部は「入院受け入れの限界は近づきつつある」と話す。この病院では7月下旬に2カ月ぶりにコロナ患者が入院し、2日後にはさらに増えて用意した病床がすべて埋まった。担当看護師の確保など増床へ準備を急ぐが「一般の患者を転院させない限り、数床程度しか増やせない」(幹部)。

繁華街のカラオケバーや飲食店などで複数のクラスター(感染者集団)が発生し、1日まで3日連続で新規感染が100人を超えた名古屋市。7月28日には病院と調整がつかず、入院が必要な16人が一時的に入院できない事態が生じた。「ベッドが逼迫している状況」(河村たかし市長)だ。

重症者向けの病床は29日時点で2618床と、2カ月半前に比べると約1割増えた。各都道府県とも、使用率は0もしくは1桁にとどまる。

しかし感染者の年齢層は重症化リスクが比較的高い中高年や高齢者に広がり、全国で92人の重症者は2週間前の2倍以上の水準だ。発症から10日ほどで重症化する傾向があるとされ、感染急拡大によってこれから急増する可能性がある。

重症者向け病床は体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)などを使えるスタッフが欠かせず、受け入れ病院も限られる。備えを急ぐ必要がある。

新型肺炎

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