新型コロナウイルスによるパンデミックが職を奪っている。緊急事態宣言が全国すべてで解除されたが、その間の休業、閉店により従業員の解雇、雇い止めが急増してきた。
厚生労働省によると、新型コロナによるとみられる解雇や雇い止めで職を奪われた人は、5月29日までで1万6723人。2月が282人、3月835人、政府が緊急事態宣言を出した4月は2654人と急増し、5月は1カ月だけでも1万2952人と、雇用危機が急速に迫ってきているのだ。
解雇、雇い止めが増える状況を労働問題に詳しい常見陽平・千葉商科大学専任講師が説明する。
「新型コロナで経済が滞る中、最も影響を受けるのが派遣社員です。しかも景気後退局面では、コロナ禍を理由にした違法解雇と同時に、契約満了で雇い止めとなる合法的な解雇も増えてくる。また次の働き先を紹介されても、不当に時給が安い会社だったということが少なくありません。派遣社員は1カ月から3カ月ごとに更新する契約が多いため、6月には解雇、雇い止めとなる人が増えることが懸念されます」
派遣会社や請負会社などで働く非正規労働者を支援する労働組合「派遣ユニオン」には、3月からコロナ関連の雇い止めなどで100件以上の相談が殺到してきている。関根秀一郎書記長が言う。
「最初はホテルなど観光業界の関係者が中心でした。その後、自動車部品会社の相談が多くなり、さらにさまざまな業種での解雇、雇い止めの相談が増えてきました。派遣社員は雇用する側の雇用調整弁として便利に使われ、今回のコロナのようなことがあると一斉に切られてきた。雇用する側に有利に調整弁が緩和されてきた労働者派遣法が問題なんです」
中堅ホテルで派遣社員として働いていたA氏は、7月までの契約だったが新型コロナの影響でホテルが休館となり5月末で契約を切られた。
「社員は解雇されず給与をもらいながらしばらく休業。一方、派遣社員は契約の残り2カ月分の給与補償もなく突然解雇です。とても納得はできません」
また、自動車部品メーカーの派遣社員B氏は、2年間契約更新しながら働いてきたが、5月末以降の契約更新はされず雇い止めされた。労働者派遣法では、派遣会社は契約満了になった労働者に次の会社を提供する義務があるとされる。
「派遣会社は次の派遣先会社を紹介はしてくれましたが、時給が2割も安く、とても生活していけません」(派遣社員B氏)
解雇や雇い止めで困窮するのは派遣社員だけではない。コロナ禍は正社員の職も奪いつつある。東京管理職ユニオンの鈴木剛執行委員長が訴える。
「リーマン・ショックではまず派遣社員が切られ、その後、製造業等の正社員の解雇が始まりました。うちも今、正社員の解雇の相談が増え、新型コロナでも同じことが起き始めている。9月決算が発表される頃と、年末の迫る12月に社員の解雇が集中してくると思います」
安倍首相は「暮らしと雇用を守り抜く」と何度も強調するが、この言葉に安心して気を緩めてはいけない。
(ジャーナリスト・木野活明)ビジネス - 最新 - Google ニュース
June 04, 2020 at 07:26AM
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