日銀は日経平均２万円を意識し戦術性高める－ＥＴＦ購入策で市場観測 - ブルームバーグ

日本銀行が上場投資信託（ＥＴＦ）の買い入れを積極化させていることについて、市場では日経平均株価の心理的な節目である２万円を意識しながら戦術的な買い入れを行っているのではないかとの声が出ている。

日銀の黒田総裁（３月16日）

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

　　日銀は３月16日にＥＴＦの年間残高増加ペースを約６兆円から上限約12兆円へ 引き上げた後、それまで３月に入って１日あたり1002億円を買い入れていた通常のＥＴＦを17日に1204億円と20％増額。19日からはさらに上乗せして同２倍の2004億円とした。ＴＯＰＩＸの午前終値が前日比マイナスの日だけでなく、1.5％上昇した日も含めて31日までの10営業日のうち５営業日で買い入れた。３月の買い入れ総額は１兆5484億円と、月間として過去最高になった。

　　積極的な買い入れの背景として、「今は悲観論を唱える人たちを一貫性ある決断で説得させてみせる必要がある」と話すのはウィズダムツリー・ジャパンのシニア・アドバイザー、イェスパー・コール氏だ。その上で、日経平均２万円を安全に超えるまで積極的な買い入れを継続させるだろうとの見方を同氏は示した。

　　ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストも、日銀は日経平均２万円を意識しているとの見解だ。２万円割れは株価純資産倍率（ＰＢＲ）が１倍を下回るため「企業や家計、投資家の心理を委縮させる恐れがある。異常事態に大量に買うことは過去の政策の延長線上として正当化できる」と同氏は語る。買い入れの対象はＴＯＰＩＸが大半だが「認知度の高い日経平均が意識されやすい」と言う。

過去最高ペース

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　　ＳＭＢＣ日興証券によると、日銀のＥＴＦ買い入れはＴＯＰＩＸ型が８割強、日経平均型が約１割、残りがＪＰＸ日経インデックス400型。日経平均２万円はＮＴ倍率の過去１年平均13.7倍を当てはめるとＴＯＰＩＸで1460ポイントに相当する。

　　日銀が買い入れ上限を引き上げて以降、日経平均は１万6000円台前半で下げ渋り、翌週には１万9000円台まで急反発して下値抵抗力を見せている。株価のボラティリティー（変動性）が大きい状況は続いているものの、日興アセットマネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ジョン・ベイル氏は「日銀の行動が非常に役立った」との見方だ。

　　４月に入ると日銀は、１日当たりの買い入れ金額を１日に1202億円へと減額した。「日銀は日々の運用に戦術的。ロボットではなく、スマートな人間だ。市場関係者は常に日銀が彼らよりも流動性と火力を持っていることを覚えておく必要がある」と、ウィズダムツリーのコール氏はみる。

　　日銀のＥＴＦ購入拡大を歓迎する声ばかりではない。セゾン投信運用部の瀬下哲雄運用部長は「グローバルに株価が下落している中で、あからさまな株価対策をされれば日本株が相対的に割高になりかねない」と語る。短期筋なら喜ぶだろうが、「５－10年を考えた長期投資で買いを入れられる局面なのに、株価が支えられると嬉しくもない」と同氏は苦言を呈した。

　　日経平均が底割れとなる場面では１日あたり金額を増やし、意識する２万円に接近する場面では引き下げる柔軟さも示した日銀。コロナ危機が長期化する中で「市場に動きを見透かされないようにアクセルを常に完全に踏み込んだままにせず、資金を温存しているという見方もできる」と、ニッセイ基礎研の井出氏は推察する。同氏によると、３月末時点での日銀のＥＴＦは簿価が30兆8801億円で、時価は31兆1738億円。日経平均ベースでみた損益分岐点は1万8793円。

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