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新型コロナに追い詰められる日銀【コメントライナー】 - 時事通信ニュース

2020年03月15日09時01分

日本銀行の黒田東彦総裁【時事通信社】

日本銀行の黒田東彦総裁【時事通信社】

 ◆大阪経済大学教授・熊倉 修一◆

 世界は、新型コロナウイルス肺炎のまん延に恐れおののいている。中国に発したこの感染症は、瞬く間にアジアから中東、欧州に及び、米国でも拡大しつつある。

 個人、企業の活動は制限され、いずれの国でも、社会経済の全般にわたり、悪影響が及んでおり、終息する兆しはうかがわれない。

 ◆未知との闘い

 この世界的規模での経済縮小は、2008年のリーマン・ショックを上回ると見込まれている。

 当時も、世界経済は「需要の瞬間的蒸発」(突然の需要の大幅落ち込み)に見舞われたが、主要国間の政策協調や中国の財政出動(4兆元=約60兆円)に支えられて、回復の途をたどることができた。

 今回は、近代世界が経験したことがない未知のウイルスとの闘いであり、人々の恐怖心は尋常ではない。

 金融市場には、こうした恐怖心が端的に表れる。ニューヨーク株式市場では、3月に入り、米国経済の悪化を悲観する心理が急速に強まり、原油価格急落も重なって、株価が大幅に続落した。

 これは世界に伝播し、日経平均株価も2万円を割り込んでしまった。安全資産と見なされる日本国債などへの資金移動がやまず、今週の円・ドル為替相場は1ドル=100円近辺の円高展開となった。

 ◆大幅下落を誘発

 こうした市場のパニックに対して、主要国の中央銀行はなす術がない。

 3月3日、米連邦準備制度理事会(FRB)の臨時公開市場委員会は、政策金利を0.5%引き下げたが、市場では、この異例の緩和措置も、経済の惨状を裏付けるものと捉えて、株価の大幅下落を誘発してしまった。

急落した日経平均株価と前日の米ニューヨーク株価を示す電光ボード=2020年3月13日、東京都中央区【時事通信社】

急落した日経平均株価と前日の米ニューヨーク株価を示す電光ボード=2020年3月13日、東京都中央区【時事通信社】


 この結果は、中央銀行に臨機応変の政策発動をちゅうちょさせる要因となった。

 それでも、各国中央銀行は、一段の緩和効果を目指した施策を模索していかざるを得ないが、感染症の暗い闇をのぞき込んだ中央銀行は、その終息を見通せず、立ちすくんでいる。

 中でも、既にマイナス金利政策を実施している日銀としては、唯一、実質的な緩和効果が期待できるマイナス金利の深堀りに踏み込むべきか、悩み抜いている。

 マイナス金利の深堀りは、民間金融機関の収益を一段と悪化させる。日銀としては、景況悪化の下で、企業を支える民間金融機関をさらに追い詰めることは避けたいところだ。

 ◆ジレンマに悩む

 しかし、金融市場への潤沢な資金供給に努めるとの異例の総裁談話(3月2日公表)は、FRBと同様に、市場に政策余地の限界を見透かされ、株価の一層の下落をもたらした。

 一方で、他国の緩和措置に後れを取れば、一層の円高進展は避けられず、それは現下の日本経済を大きく傷つける。

 日銀は3月18、19両日の金融政策決定会合で、あるいは、その前にでも、資金供給の増加に加えて、マイナス金利の強化を含めた緩和措置に踏み切らざるを得ないだろう。

 ウイルスは、ジレンマに悩む日銀に容赦なく決断を迫っている。

 (時事通信社「コメントライナー」2020年3月11日号より)

 【筆者紹介】

 熊倉 修一(くまくら・しゅういち) 1977年東京大学卒業、日本銀行に入行。札幌支店副支店長として北海道拓殖銀行の経営破綻処理に取り組み、考査役時代は大手・地方銀行の日銀考査を実施。わが国金融機関の経営構造に詳しい。2009年3月日銀を退職し、同年4月より現職。著書に「日本銀行のプルーデンス政策と金融機関経営」(白桃書房)、「中央銀行と金融政策」(晃洋書房)など。

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