日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する国際線中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)は12月18日、ボーイング787-8型機の初号機(登録記号JA822J)を成田空港の格納庫で公開した。就航は2020年5月14日を予定しており、1路線目は成田-バンコク(スワンナプーム)線となる。
—記事の概要—
・個人用モニターなし、LCC世界初ウォシュレット
・上級シートはフルフラット
・国内線用787と同じ座席間隔
・モニター全廃で0.5トン軽量化
個人用モニターなし、LCC世界初ウォシュレット
成田空港の第1ターミナルを拠点とするZIPAIRは、英語で矢などが素早く飛ぶ様子を表す擬態語「ZIP」を冠した。機体はJALと同じ白がベースで、コーポレートカラーのサブカラー「トラスト・グリーン」のラインを入れ、前方胴体にロゴを大きく描いた。機首のレドームやエンジンカウルなどの交換が発生した際、JALから融通できるようにしている。
機材はJALからリース導入する2機の787-8でスタートする。座席数は2クラス290席で、JALの同型機と比べて約1.5倍となった。内訳はフルフラットシートを採用し、ビジネスクラスにあたる上級クラスの「ZIP Full-Flat(ジップ・フルフラット)」が18席、エコノミークラス「Standard(スタンダード)」が272席となる。
18日に機内を公開した初号機となるJA822Jは、JAL初の787投入路線である2012年4月22日就航の成田-ボストン線初便に使用された機体。就航時の座席数は2クラス186席仕様(ビジネス42席、エコノミー144席)で、JAL便として塗装変更前最後の運航は、9月6日のホーチミン発羽田行きJL70便だった。
個人用モニターは両クラスとも装備しないが、機内Wi-Fiサービスは衛星回線を使ったインターネット接続にも対応。ラバトリー(化粧室)は7カ所あるうち、3カ所はウォシュレット付きとなる。ギャレー(厨房設備)は全員分の機内食を用意する必要がないため、JAL仕様では4カ所あったが3カ所に減らした。また、改修前にあったバーカウンターも撤去している。
ZIPAIRの西田真吾社長は、ウォシュレットについて「LCCでは世界初と認識している」と語った。ラバトリーについては、前方1カ所を2つのラバトリーの間仕切りを開けることで車いす客などが使いやすくする「コネクティングラバトリー」を採用した。
機内サービスの詳細や運賃は、2020年春までに発表する。
上級シートはフルフラット
ZIP Full-Flatのシートは、1列あたり1-2-1席配列で18席。ジャムコ(7408)製ビジネスクラス用シート「Venture(ヴェンチュア)」を採用した。KLMオランダ航空(KLM/KL)の787のビジネスクラスと同じシートで、180度リクライニングするフルフラットシートを斜めに配置する「ヘリンボーン配列」で、全席から通路へアクセスできる。
中央席はディバイダーで仕切れるなど、プライバシーを考慮した設計。本革シートで、家庭のリビングでくつろぐような過ごし方をイメージした。シートピッチは42インチ(約107センチ)で、座席幅はひじ掛けの間で20インチ(約51センチ)となる。
ZIP Full-Flatは他社では個人用モニターを装備する場所に、小物が入るポケットを設けた。
国内線用787と同じ座席間隔
Standardのシートは、3-3-3席配列の1列9席で272席。独レカロ製シートで、シートピッチは31インチ(約79センチ)で、JALの国際線用787の34インチ(約86センチ)よりは狭いものの、国内線用787-8と同じピッチを採用した。改修前のJAL仕様は、787では世界唯一になった2-4-2席配列の1列8席だったが、1列あたり1席増えたことやギャレーとラバトリーの配置見直しにより、大幅に座席数が増えた。
座席幅はひじ掛けの間で17インチ(約43センチ)、リクライニング幅は3インチ(約8センチ)。リクライニング時は背もたれと座面が同時に動き、ゆりかごのような座り心地を目指した。
個人用モニターがない分、テーブルとタブレットホルダー、電源コンセント、充電用USB端子を全席に設けた。コンセントとUSB端子は一体型で、最前列は自席、その他の席は前席左下に設置した。
ZIP Full-Flatが本革なのに対し、Standardは人工皮革を採用することで、本革よりも4割軽くした。
モニター全廃で0.5トン軽量化
西田社長は、「個人用モニターを廃止したことで、重量を0.5トン軽くした。1座席当たり29%重量が軽い。0.5トンというと小さく感じるかもしれないが、燃料消費を抑えられるので価格に還元したい」と語った。
2機目はJALの導入初号機(JA825J)を改修し、2020年1月末に受領予定。1年に2機ずつ増やし、就航2年で黒字化を目標に掲げている。2路線目の成田-ソウル(仁川)線は、2020年7月1日に開設予定。北米西海岸やハワイ路線の開設を視野に入れており、2021年までの就航を目指す。
海外と国内の発券比率について、西田社長は「半々にしたい。海外ではウェブ広告や旅行イベントへの出展でプロモーションしていきたい」と語った。また、日本のLCCとして訴求ポイントになりうる定時性については、「安全以外では優先度が一番高いのが定時性」(西田社長)と、海外LCCとの差別化につなげる。
「定時性は機材の稼働率向上にもつながる。短距離LCCの稼働は1機あたり1日12時間だが18時間にしたい」(西田社長)と語った。
*写真は20枚。
*写真特集を別途掲載予定です。
関連リンク
ZIPAIR Tokyo
日本航空
・ZIPAIR、180億円に増資 JALが全額出資
・写真特集・ZIPAIR 787初号機成田到着(19年10月28日)
・なぜZIPAIRの787は白なのか JAL初期導入機活用の思惑(19年4月14日)
・JAL中長距離LCC「ZIPAIR」、機体デザインと制服発表 西田社長「働きやすさ重視」(19年4月11日)
・JAL中長距離LCC「ZIPAIR」、787で成田-バンコク・ソウル20年就航 米西海岸も視野(19年3月8日)
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December 18, 2019 at 01:30PM
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