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「うちより大事な業者あるんか」元助役激高、関電に関連会社名挙げて迫る - 読売新聞

 関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役・森山栄治氏(故人)から金品を受け取っていた問題で、金品受領は30年以上前から続いていたことが明らかになった。森山氏が金品を渡した際、関電側に「見返り」を求めたとの証言もあり、15日に調査の越年を表明した第三者委員会(委員長=但木ただき敬一・元検事総長)の再調査でも焦点となりそうだ。

 森山氏から1987年頃、1万円超の商品券を自宅で受け取っていた関電の元役員は、読売新聞の取材に、「来訪の目的は記憶にない」とした上で、森山氏が自身に関連する兵庫県高砂市の会社の名前を挙げて、「『よろしく頼む』と言ったことは覚えている」と証言した。

 同社は森山氏を相談役として迎えていた時期があり、福井県内にも事業所を置く。近年は取引の9割を関電と関連会社が占める。

 当時は、元役員が大飯原子力発電所(福井県おおい町)の所長に就いて2年が過ぎた頃。森山氏が工事発注への便宜を求めていると受け取った元役員は、その後、同社幹部と会った際、「原発の仕事はいくらでもある。くだらないことを考えるな」と諭したという。

 別の元役員が10万~20万円の商品券を受け取ったのは、大飯原発の所長に就いて数か月を経た95年頃のことだった。返礼品として、商品券の額に上乗せしてアクセサリーを買い、京都市内の森山氏宅に届けた。

 「私の関係会社が地元にあるんや」。後日の会議で森山氏からそう言われた元役員が、「地元の企業はほかにもありますよ」と返すと、森山氏は突然、「うちより大事な地元業者があるんか」と激高。「自分を大事にせなあかんぞ。家族も大事やろ」とどう喝されたという。

 若狭支社(原子力事業本部に統合)の元支社長は96年頃、就任祝いとして「儀礼の範囲を超える高価な物」を受け取った。1年以内に返却したが、その度に森山氏から「原発を止めるぞ」「俺の志が受け取れないのか」と詰め寄られた。

 元支社長は「原発の責任者が森山氏の対応をすることは、暗黙の了解になっていた」と振り返った。

 このほか、京都支店(現京都支社)の支店長や美浜原発(福井県美浜町)の所長だったOBらが、森山氏から数十万円の商品券や、数の子などの歳暮を受け取ったと証言。いずれも、関電が10月に公表した社内調査の対象外だった。

 大阪市内の関電本社で15日、第三者委が開いた記者会見で、但木委員長らメンバー4人が調査の現状を報告した。調査の具体的な内容は明らかにされなかったが、但木氏は「奥が深い問題も出ている」と、調査の過程で新たな問題が浮上していることを示唆した。

 但木氏らの説明によると、第三者委発足後の約2か月間、弁護士ら約25人で100人超の聞き取りを実施した。グループ会社の社員やOBなどに調査対象を広げ、情報収集用のホットラインも開設。「デジタル・フォレンジック」を活用して役員のパソコンやメールを解析していることや、委員らで高浜町を視察したことも明かした。

 関係者によると、第三者委は、聞き取りの対象者に、聴取内容を口外しないよう求めているという。

 全容解明へのハードルは高い。但木氏は、金品受領が始まったとみられる1980年代以前まで遡って調査する考えを示す一方、「当時の方はほとんど亡くなっており、高齢で(聴取が)難しい方もいる」と、聞き取りの難しさを吐露。最終報告は、関電側が当初求めていた「年内」から大幅にずれ込む見通しで、来年3月までの「今年度中」に間に合うか問われても、「残念ながらお約束できない」と言葉を濁した。

 一方で但木氏は、「単純に解決するものじゃない、もっと大きな問題と絡んでいる気がしてきた」と、新たな問題の存在に言及。調査の進捗しんちょく度を、「量的に5合目は超えたと思うが、質的にそう言えるか、わからない」と表現した。

 会見で「一番の関心事」(貝阿弥かいあみ誠委員)とされたのが、金品受領が工事の発注など関電側の意思決定に影響を及ぼしたかどうかだ。社内調査では、関電側が発注予定工事の規模や概算額を事前に森山氏に伝えていたことがわかっているが、調査の重要な鍵となる森山氏の関係会社や親族への調査については、「お答えを差し控える」(但木氏)と繰り返した。

デジタル・フォレンジック=「電子鑑識」の意味で、パソコンなどから消去されたり書き換えられたりした電子データを復元・解析する技術の総称。近年、事件捜査や企業不祥事の第三者委で活用が進み、ハードディスクなどから復元されたメールや資料が証拠として採用された例がある。

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December 16, 2019 at 03:00AM
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