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「ヤフーとLINE首脳の真意は?」衝撃の経営統合会見で語られた5つの重大要素 - Business Insider Japan

会見で撮影する報道陣

ZホールディングスとLINEは経営統合に関する記者会見を11月18日に実施。日本で広く利用されている2社が手を組むということで、多くの報道陣が集まった。

撮影:小林優多郎

お互いに相手のコーポレートカラーのネクタイを締め、2社の社長が交互に提携の理由や狙いを説明。ときには冗談も挟まれ会場の笑いを誘う……。

11月18日に開かれたヤフーを子会社とするZホールディングスとLINEの経営統合に関する緊急説明会は、両首脳が発する「言葉」から真意を探ろうという報道陣の熱気であふれていた。

プレス席は約300席。国内だけではなく中国大手メディアの姿もあった。相次ぐ質問に、会見の終了時間は予定より1時間ほど超過した。

両社社長

写真左からZホールディングス社長の川邊健太郎氏、LINE社長の出澤剛氏。

撮影:三ツ村崇志

2社が組む表向きの理由と、今後のスケジュール感は、既に18日8時30分頃に適時開示で明らかになっている

そのため会見では、両社の各ユーザーにどんなメリットがあるのか、経営統合に至るまでの経緯、両社親会社(Zホールディングスはソフトバンク、LINEはNAVER)の考え、巨大IT企業同士の統合の道筋に質問が集中した。

会見の内容や質疑応答を、5つのポイントに整理してみよう。

1. PayPayとLINE Payなど、2020年10月まではそのまま

各社のサービス

ヤフーとLINEはそれぞれ競合するサービスも展開している。

撮影:小林優多郎

今回の会見に登壇したZホールディングスおよびヤフー社長の川邊健太郎氏とLINE社長の出澤剛氏が、何度も発したのは「統合後にならないと詳しいサービスの話はできない」というフレーズだ。

とくに、政府も推進し両社が現在も競い合っているキャッシュレス決済事業についての質問は複数回あったが、基本的には上記のコメントを繰り返した。さらに川邊氏は「(経営統合予定の2020年10月頃までは)あくまでも別の会社。切磋琢磨する別の会社だと思っている」と話し、出澤氏も同意していた。

社会課題の解決

川邊氏が挙げたシナジーの効果が発揮できる分野の1つが「社会課題」の解決だ。

撮影:小林優多郎

川邊氏は「花嫁武者修行を両社でするという感じかな」とも語り、少なくとも10月頃まではPayPayおよびLINE Payが統合される(どちらかが廃止になる)ということはない旨を示した。

例外として、両社のシナジーが活かせるものとして言及されたのは、防災・減災についての取り組みだ。「Yahoo!防災速報」とLINEの公式アカウントを組み合わせて、自然災害による被害をより少なくできる可能性が示唆された。

2. 経営統合はヤフーからのアプローチ、LINEも危機感から同意へ

歓談する両社社長

ライバルながらも良好な関係をアピールする両社。

撮影:小林優多郎

ヤフー(ソフトバンク)とLINEの資本関係強化という話題は、実は今に始まった話ではない。過去には、ブルームバーグがソフトバンクが出資打診をしたと報じてもいる。

会見で、川邊氏と出澤氏はこれまでに“新年会”のような形で年1回ほど会合を開いていたと語った。川邊氏は自身を「LINEのヘビーユーザー」と称し、ヤフーが持っていないソーシャル機能を持つLINEへ会食の度にアプローチを試みていたと話す。

だが、これまで「(LINE側の役員に)ほぼ笑って済まされていた」(川邊氏)が、「2019年は反応が違った」と統合の話が進んだきっかけを明らかにした。

危機感

両社にとっての脅威はアメリカや中国の巨大IT企業。

撮影:小林優多郎

一方、LINE側は川邊氏からアタックを認めた上で、「思うところあって具体的に検討を進めるようになった」と告白。

出澤氏が抱いた“思うところ”というのは、両社が統合の最大の理由に挙げている、競合する巨大な米中IT企業への危機感だ。

「我々はスーパーアプリ、古くはスマートポータル、最近では『Life on LINE』という言い方をして、LINEとしてあらゆることを実現しようとしてきた。

やはり時間とともに、グローバルの強いところ(企業)が出てきている、国内でも強いところが出てきている。そこに対して、今、手を打って次に進むべきだと、一番の思ったところだ」(出澤氏)

LINEは日本に加え、台湾、タイ、インドネシアでもユーザーを抱えており、グローバル全体での月間アクティブユーザー数は1億6400万人にのぼる。

一方で、その他の国、とくにアメリカや中国といった人口の大きな国ではFacebookやテンセント(腾讯)など、別のプレイヤーに遅れをとっている現状がある。そして、それらの企業は着々と日本をはじめアジア諸国の攻略を進めている。

3. 統合の発端は、“親会社はほぼ無関係”と語る

グループ会社

両社のグループによるシナジーは発揮していくが、“経営統合のきっかけ”には大きく関わっていないという。

撮影:小林優多郎

経営統合の方針が報じられてから、各種報道を賑わせていたのは「各社の親会社がどう関わったのか」という点だ。とくに、ソフトバンクグループ(SBG)会長である孫正義氏がどう関わったのかは、SBGが直近に開催した決算説明会で「真っ赤っかの大赤字」(孫氏)としていたこともあり、「LINE経営統合は孫正義の秘策」というような形で注目を集めていた。

けれど、今回の会見で川邊氏はこの噂を次のように否定した。

「孫さん主導、SBG主導という報道が情報不足の中で走っているが、かなりの程度、両当事者で話して、ソフトバンクの宮内社長、NAVERの方々に話してすすめてきた話。孫さんはこれに関しては関与してこなかったというのが真実」(川邊氏)

また、川邊氏はLINE側の親会社・NAVERの決断についても「私が話せる立場ではない」としながらも、自身の予想を語った。

「NAVERは(LINEを)非連結にするという判断をしてでも、アジアに出していくAI テックカンパニーを作ろうと決断、ある種譲ってくれた。どうにかして世界の第三極に食い込もうという意欲は一致しているのではないか」(川邊氏)

なお、出澤氏もNAVERの思惑について「コメントする立場にはない」とし、川邊氏の考えに同調する構えを見せた。

4.「日本特化」が米中IT企業への最大の対策

両社の人

両社の技術力、人材が1つになるのも注目のポイントだ。

撮影:小林優多郎

会見では顧客基盤だけではなく、両社のもつ技術や資産、そして人材の話にも及んだ。発表会資料によると両社で働く従業員を合計すると約2万人、年間投資額は約1000億円にのぼることを明らかにしている。

しかし、両社は客観的事実として「それでも米中IT企業とは大きな差がある」(出澤氏)と見ている。そこで、資金や人を日本市場に集中させ、既にGAFAなどの先行するサービスを使っている国内ユーザーに対し、「もう1つの選択肢として国産のAIテクノロジーを提案する」(川邊氏)方針を示した。

それら提案できるアセット(資産)の中には、Zホールディングスの親会社であるソフトバンクの通信事業、国内ではヤフーやソフトバンクのジョイントベンチャーであるDiDi(滴滴出行)やOYO、NAVERが持つAI技術やSNOWなどの人気コンテンツのノウハウも含まれるとしている。

5. LINE(NAVER)とヤフー(ソフトバンク)の力関係は未知数

関係図

ヤフーとLINEはZホールディングスの下で1つとなる。

撮影:小林優多郎

ヤフーおよびLINEの事業会社の親会社にはZホールディングスが入る。Zホールディングスの経営陣には、同等の権限を持つCo-CEOとして川邊氏と出澤氏が代表権を持つ方針。そのため、両社は経営統合は“対等的な関係”であることを、会見の中でも度々強調した。

しかし、LINE社は前述のとおり、ソフトバンクによって株の公開買付け(TOB)が行われLINEは決算上ではソフトバンクの連結子会社となり、Zホールディングスの「社長」は引き続き川邊氏が務めるなど、「LINEのソフトバンク化」が強く印象に残る。

組織図

現状予定されている統合後の取締役会およびプロダクト委員会のメンバー。

出典:LINE

ただ一方で、LINE・NAVER陣営がヤフーに強く交渉できる要素も存在する。それがZホールディングスに新設される「プロダクト委員会」だ。

プロダクト委員会はヤフーおよびLINEのサービス・製品に関する方向性を決める組織だ。発足当初は、以下の各社5名ずつのメンバーが参加する予定となっている(括弧内は現在の各社での肩書き)。

  • LINE側:出澤剛氏(代表取締役社長 CEO)、慎ジュンホ氏(代表取締役 CWO)、舛田淳氏(取締役 CSMO)、黄仁埈氏(取締役 CFO)、 朴イビン氏(上級執行役員 CTO)
  • ヤフー側:川邊健太郎氏(代表取締役社長 CEO)、小澤隆生氏(取締役専務執行役員 COO)、宮澤弦氏(取締役常務執行役員)、坂上亮介氏(取締役常務執行役員 CFO)、藤門千明氏(取締役常務執行役員 CTO)

慎ジュンホ氏

NAVER出身であるLINEの慎ジュンホ氏が、ヤフーおよびLINEが関わるプロダクトのキーマンとなる(写真は2019年7月撮影)。

撮影:小林優多郎

出澤氏によると基本的には「委員会のメンバーで議論し、決断をしていく」とのことだが、仮に意見が拮抗してしまった場合は、「(委員会内に設置した)CPO(Cheef Product Officer)が決定する」としている。

そして、その初代CPOを務めるのは、NAVER出身である慎ジュンホ氏だ。慎氏はZホールディングスの代表権こそ持たないが、事業の意思決定においては大きな力を持つことになる。

両社をとりまく環境は不確定要素が多い

手を交わす2人

1つになれるかどうか、最強になれるかどうかは、まだ始まったばかり。

撮影:小林優多郎

前述のとおり、今回の会見ではZホールディングスとLINEの事業の具体的な展開についてはほとんど語られなかった。

その理由は両社が話すように、まだ基本合意段階というだけではなく、GAFAなどと比べれば小規模とはいえ、両社とも時価総額1兆円を超える2つのIT企業の経営統合だからだ。各種規制に抵触していないかなどの審査が発生し、その状況や今後の政府の対応によっては、経営統合自体が“白紙に戻る”“見直される”といった事態もゼロではないからだ。

日本で活躍するプラットフォーマーが手を組み、日本そしてアジアで成長する一大企業になる、と両社首脳は語るが、それがスムーズに実現するのかは、まだわからない。

両社は1年後の2020年10月を経営統合完了のターゲットにしている。この1年の動きは、今後たびたび注目が集まることになるだろう。

(文・小林優多郎 取材・小林優多郎、三ツ村崇志)

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November 19, 2019 at 03:11AM
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